YouTube貼りすぎてめっちゃ重い!!!! ごめん!!!!
この記事は「すしすきー vol.1 Advent Calendar 2024」7日目の記事です。
はじめに
はじめまして、蝉暮せせせです。
#私を構成する42枚 について書きます。
以下の文章は音楽レビューではなく推しキャラに対するオタク語りのようなものだと思ってください。
読み手のことをほぼ考えることなく、自分の人生において大事なアルバムについてこのアルバムを聴いて人生がこのようにひん曲がったとかどこがどういった風に好きかとかを書いています。
- はじめに
- #私を構成する42枚
- 01. Mary had a little love / <echo>PROJECT (2011 / 東方アレンジ)
- 02. ファンクラブ / ASIAN KUNG-FU GENERATION (2006 / 邦楽)
- 03. C / Base Ball Bear (2006 / 邦楽)
- 04. kocorono / bloodthirsty butchers (1996 / 邦楽)
- 05. LISTENING SUICIDAL / BOaT (2000 / 邦楽)
- 06. orbital period / BUMP OF CHICKEN (2007 / 邦楽)
- 07. Obscure Ride / cero (2015 / 邦楽)
- 08. よく晴れた朝は地下を探索しに出かけよう / Climb The Mind (2008 / 邦楽)
- 09. SUBMERGE / COALTAR OF THE DEEPERS (1998 / 邦楽)
- 10. Where You Been / Dinosaur Jr. (1993 / 洋楽)
- 11. _ / group_inou (2010 / 邦楽)
- 12. Re:package / livetune (2008 / ボカロ)
- 13. focus and defocus / minimum electric design (2012 / 東方アレンジ)
- 14. Loveless / My Bloody Valentine (1991 / 洋楽)
- 15. NUM-HEAVYMETALLIC / NUMBER GIRL (2002 / 邦楽)
- 16. 旅人と、その恋人 / OTAKU-ELITE Recordings (2010 / 東方アレンジ)
- 17. Family Record / People In The Box (2010 / 邦楽)
- 18. PIZZICATO FIVE / PIZZICATO FIVE (1999 / 邦楽)
- 19. Kid A / Radiohead (2000 / 洋楽)
- 20. 悲しい耳鳴り / SPARTA LOCALS (2002 / 邦楽)
- 21. HELL-SEE / Syrup16g (2003 / 邦楽)
- 22. 回帰する呼吸 / the cabs (2011 / 邦楽)
- 23. Stray Light / wintermute (2009 / ボカロ)
- 24. BGM / Yellow Magic Orchestra (1981 / 邦楽)
- 25. Visions & Flowers / えこまる (2010 / ボカロ)
- 26. 天国と地獄 / カーネーション (1992 / 邦楽)
- 27. THE WORLD IS MINE / くるり (2002 / 邦楽)
- 28. 不眠画報 / ごりら公園 (2018 / 東方アレンジ)
- 29. フジファブリック / フジファブリック (2004 / 邦楽)
- 30. BeVeci Calopueno / モーモールルギャバン (2011 / 邦楽)
- 31. モジャのみぞ知るセカイ / モジャン棒 (2013 / 東方アレンジ)
- 32. RADIO ONSEN EUTOPIA / やくしまるえつこ (2013 / 邦楽)
- 33. 幻想事変 / 岸田教団&THE明星ロケッツ (2007 / 東方アレンジ)
- 34. レティクル座妄想 / 筋肉少女帯 (1994 / 邦楽)
- 35. ゆるポート辞典 / 緊急ゆるポート (2013 / ボカロ)
- 36. ヘヴンリィ・パンク:アダージョ / 七尾旅人 (2002 / 邦楽)
- 37. LIFE / 小沢健二 (1994 / 邦楽)
- 38. ぞうの王様 / 真空メロウ (2003 / 邦楽)
- 39. 三十世界2 / 進行方向別通行区分 (2010 / 邦楽)
- 40. ティーンエイジ・ネクラポップ / 石風呂 (2012 / ボカロ)
- 41. やめも / 全自動ムー大陸 (2014 / ボカロ)
- 42. diorama / 米津玄師 (2012 / 邦楽)
- お疲れ様でした
- おまけ
- 宣伝
- 宣伝2
以下、公式でYouTubeがあるやつは貼っています。ないやつはSpotifyにあったら貼ってます。それでもないやつはどこかに非公式で上がってる気がするので探しましょう。
#私を構成する42枚
01. Mary had a little love / <echo>PROJECT (2011 / 東方アレンジ)
この日本には東方アレンジという音楽ジャンルがありますね。
東方Projectという同人ゲームがあり、そのゲーム内のBGMをいろんな人が自由に編曲してときに歌詞を付けたり歌ったりして作られる音楽を指します。
僕は東方Projectが大好きなので、以下に述べる42枚には東方アレンジがいくつか含まれています。
<echo>PROJECTは東方アレンジサークルの1つで、2010年代前半にめちゃくちゃ聴きまくりました。
バラエティ豊かなアレンジをするサークルで、ロックありポップスありジャズありエレクトロありという感じで多彩、かつ洒落ててハイセンスな雰囲気に惹かれて聴いていました。
このアルバムはコンセプトアルバムで、宇佐見蓮子さんとマエリベリー・ハーンさんという二人の少女が東方Projectの外伝みたいなやつに出てくるんですが詳細は省きます。
CV的に二人のボーカリストが歌い継いでいく。歌詞の世界観はさることながら曲もポスト渋谷系っぽいポップスとかギターロックとかダブステップとかいろいろで素晴らしいです。
アルバムトータルで完成度がすごいんですが「Dreaming hour」「Stray CS am3:00」「drip+drop」「whip*syrup」「星空露光」のメロディがえげつなく良い名曲5連発の流れが凄まじい。
個人的に蓮メリのイメージがこのアルバムで固定されている。蓮メリすぐ死ぬ。
02. ファンクラブ / ASIAN KUNG-FU GENERATION (2006 / 邦楽)
この日本には邦楽ロックというジャンルがありますね。
初めてロックバンドというものを意識して聴いたのはアジカンだと思う。ニコ動で「センスレス」を聴いてソルファを親に買ってもらった覚えがある。
くるりの魂のゆくえとどっちが最初に買ったCDかちょっと覚えていない。
で、ソルファではないんですがこのアルバムの暗さと小難しさはやっぱりすごく好きでアジカンでは一番好き。
「暗号のワルツ」「ブルートレイン」で生まれて初めて変拍子というものに触れた気もするし。そうした全体に漂うマスロックっぽさと陰鬱な感じが「月光」で解放される流れが美しいと思う。
そして超名曲「ブラックアウト」。
歌詞は未だによくわかんないけど、ポップな小気味良さと不穏さに一発で惹かれてずっと聴き続けています。
03. C / Base Ball Bear (2006 / 邦楽)
ベボベに初めて触れたのは確か新呼吸が出た頃なので、近しいバンドを聴いていたにしては結構遅い出会いだと思う。もう多分ナンバガも全作聴いていた。ていうか今思い出したけどベボベには勝手に苦手意識を持ってたんだった。忘れていた。
このアルバムの1曲目~7曲目はマジで全曲完璧だと思う。ごめんなさい「DEATHとLOVE」がちょっと苦手で……。
四つ打ちロックがもはや形骸化した今となっても「ELECTRIC SUMMER」はありえんほど名曲。
思えばこのアルバムで歪ませすぎないギターの綺麗さを知った気がする。「GIRL OF ARMS」のイントロは掛け値なしに美しい。
04. kocorono / bloodthirsty butchers (1996 / 邦楽)
名盤と言われている。個人的にもkocoronoが一番好き。
まずジャケットがいいよねー。ビッグマフ。好きなジャケット一枚選べと言われたら迷わずkocoronoのジャケットを挙げる。
kocoronoはナンバガに触れたのと同時期くらい(2010年あたり)に初めて聴いてめっちゃ聴いてました。
中身はまあ有名すぎるのでここで書くこともないか……。オルタナティブロック好きなら必携だと思います。
みんな大好き「7月/july」が入っている。でも個人的に一番好きなのは「august/8月」。
05. LISTENING SUICIDAL / BOaT (2000 / 邦楽)
かつてBOaTというバンドがいました。一部では有名なんですが、テンションの異常なロックのようなパンクのようなポップなような曲を作り続けてラストアルバムで急にめちゃくちゃ寂寥感のあるマスロックになって解散したという謎バンドです。
BOaTならROROだろ!って言われるかもしれないですがもちろんROROも名盤だと思う。でも一大ポップ展覧会であるところのこのアルバムを推したい。
「PLANET FOXY」「狂言メッセージ」「代打デストロイ&サーチ」でエヴァーグリーンなポップスやったかと思えば「DON'T YOU」でパンクス通り越して狂人なテンションを見せたり、「紋味」は完全にキメてるしかと思えば「グッバイ・マイ・ストレンジ・ナンバー28」「雲番人Bと釣人A」で急にディープなポストロックやるし。ちょっとは落ち着いてほしい。
初期BOaTの人懐っこさと狂人っぷりの集大成という点でもこのアルバムには思い入れが強いです。
06. orbital period / BUMP OF CHICKEN (2007 / 邦楽)
もちろんバンプが好きです。ニコ動以前からの出会いで、皆さんと同じくFF11のフラッシュで聴いて知ったので音楽聴き始めのかなり最初のほうで知ったバンドの1つだと思う。
なので音楽趣味以前の人格形成に関わってそうな気がする。ここで選んでる42枚だいたいそうですが。
バンプで一番好きなアルバムがorbital periodっていうのはいろんなとこで書いてるのでもちろんみんなご存知だと思うんですけど、orbital periodがバンプで一番好きなアルバムです。
僕はとにかく人生についての音楽が好きで、このアルバムはずっと人生についての話をしている。因果が逆で、このアルバムが好きだから人生についての音楽が好きなのかもしれん。
相互扶助の曲あり(※メーデーのこと)上手くいかなさに腐る曲あり労働の曲ありかくれんぼの曲あり幼少期の曲ありガラス玉ひとつ落っこちて一人分のひだまりに二つはちょっと入れない曲あり、人生のだいたいの要素がここに語られている。
そのすべてが「arrows」に至り、「涙のふるさと」のイントロのカウントでカタルシスを迎える、スケールの壮絶な人生賛歌。
このスケールでこの完成度で人生を描ききったバンドを他に知らない。
バンプは歳を重ねるごとにエモくなっていく気がする。
「supernova」そして「飴玉の歌」での圧倒的な生の肯定。エモいです。
07. Obscure Ride / cero (2015 / 邦楽)
みんな大好きObscure Ride。
ただリアルタイムではなく、聴いたのは2016年になってからだと思う。「Summer Soul」を聴きながら炎天下の八王子を彷徨ったのを思い出す。
めっちゃお洒落で聴いてて気持ちいい!なので好き。お洒落かつ、メロディが親しみやすくてポップなのもいいですね。歌詞もお洒落。
いやもうちょっと真面目に書くとブラックミュージックからのフィードバックとかネオソウルがどうこう、みたいな話になってくるけどあんまり小難しく考える必要ない音楽だと思う。
「Orphens」はずっと名曲です。
08. よく晴れた朝は地下を探索しに出かけよう / Climb The Mind (2008 / 邦楽)
Climb The Mindもかなり昔から聴いてて、それこそこのアルバムを出た翌年とかに買っている。なぜかその次作「ほぞ」をリアルタイムで買っておらず、その後入手困難となったその作品を手に入れるのに8年かかることになるのですがまた別の話です。
ギターとベースがともにフレーズを弾きまくり、そこに手数の多いドラムが絡む。スリーピースの構成がいい感じに絡んでて気持ちいい。
それに乗っかる短編小説っぽい歌詞。後年の作品だともっと私小説っぽくなるけど、このアルバムでは超現実的でポエミー。だから好き。
「萌える傘の下」はずっと名曲です。
09. SUBMERGE / COALTAR OF THE DEEPERS (1998 / 邦楽)
この記事にすべて書いてるので読んでください。
10. Where You Been / Dinosaur Jr. (1993 / 洋楽)
このリスト最初の洋楽。トータルで3枚くらいしかないんですけど。
全作聴いたわけではないんですがDinosaur Jr.というバンドは「Green Mind」というアルバム(名盤)で以前以後の作風が別れており、そしてどっちかというとこの作品以後のほうが好き。
このバンドは基本的にめっちゃやる気ないボーカルとあんまりやる気ない演奏がすげえいい感じの曲をやっているというバンドなんですが、このアルバムは特にいい感じにやっている。
「Out There」「Get Me」「Drawerings」などへろっへろで気だるいロックが目白押しなんですが、なぜか非常にエモさを感じる。「Get Me」のちょっと歌ってはギターソロを弾きまくる感じがかっこいい。「Get Me」と「Drawerings」のイントロが2曲続けて完全に同じというお茶目さもあります。
あとラスト1個前の「Goin Home」も好きで、これはアコギとか細いシンセがメインのちょっとオシャレなギターポップさも感じる曲ですがメロディがすごくいい。
でもなんといっても「Start Choppin」、Dinosaur Jr.で一番好きな曲。メロディが素晴らしくて演奏がかっこよくてエモーショナルというこれぞDinosaur Jr.という曲。90年代の長閑な空気も漂っている気がして郷愁を感じる。
11. _ / group_inou (2010 / 邦楽)
inouを初めて聴いたのは「FAN」なんですが、僕は未だにあのアルバムがよくわかってない気がする。そこから時間を置いて「DAY」を聴いてドハマリした。
そんで一番よく聴いたのはこのアルバムかなと。まず「ZYANOSE」が超いい曲。「STATE」「HALF」「GRAZIE」も好き。もちろん「THERAPY」と「HEART」の2曲は核として機能している。
歌詞も全アルバム中一番刺さる。一生消えない記号になりたいです。
12. Re:package / livetune (2008 / ボカロ)
ボカロ黎明期の名盤。というか確か初めてメジャー流通したボカロアルバム。個人的にも「ストロボナイツ」が初めて聴いたボカロ曲なので非常に思い入れ深い。
「ファインダー」「Last Night, Good Night」「our music」を筆頭にkzさんの初期の名曲がずらりと並んでいるのに加えて、かじゅきPの曲はここでしか聴けないはず……!
「リラホルン」の陰のある世界観がほんっとに昔からずっと大好き。曲単体でも素晴らしいし、この曲がアルバムの中心にあると無いとでは聴こえ方が全く異なってくると思う。
13. focus and defocus / minimum electric design (2012 / 東方アレンジ)
minimum electric designはシューゲイザーやポストロックやエレクトロニカやシティポップに影響を受けたアレンジを作っているサークルさんです。
ちなみにここで言うシティポップは80年代シティポップではなく一十三十一やparis matchみたいな音楽。今では概念自体取って代わられましたね。
このアルバムは特にアダルティなシティポップ色が強い。冒頭「眠らない夜に見る夢」がエレピとアコギ中心の気怠げな曲で、続き「secret garden」は全英詞のおしゃれなファンク。その後はニカっぽいポップからファンクにスイッチする曲とか疾走エモロックとかが並ぶんですが本当に全曲粒揃い。
当時のミニエレは本当に脂が乗ってて、多様なアイデアの上でひたすらおしゃれな曲作りまくっててめちゃめちゃに聴きまくりましたね。
こんなにおしゃれな音楽を聴いている私はきっと特別な存在なのだと思いました。
14. Loveless / My Bloody Valentine (1991 / 洋楽)
みんな大好きマイブラ。僕も大好き。
長らく自分はシューゲイザーというジャンルが好きだと思ってたんですけど、最近そうではなく単にマイブラが好きなだけだということに気づいた。ケヴィン・シールズがこのアルバムで書いてるメロディが本当に好き。
マイブラがクリエイションに入る以前は甘いギターポップをやっていたことを引き合いに出すまでもなく、ラヴレスは非常に優れたギターポップのアルバムだと思う。ちょっとギターが歪みまくってたり化け物の鳴き声みたいな音を出してたりするだけで。
「When You Sleep」「Come In Alone」「Sometimes」そして「What You Want」で惜しげもなく披露される流麗なメロディとそれを轟音で塗り潰していく様は本当に発明。
15. NUM-HEAVYMETALLIC / NUMBER GIRL (2002 / 邦楽)
みんな大好きナンバガ。僕も大好き。
ナンバガを初めて聴いたのは「透明少女」だったんですが、全然良さが分からなかった。
あの曲はメロディアスとは言いづらく、その頃既にアジカンみたいなもっとポップな曲を作るフォロワーを通っていたのであんまりピンと来なかったんだと思う。
しかしその後聴いた「鉄風 鋭くなって」と「NUM-AMI-DABUTZ」は一発で気に入った。全ての音が鋭くて極まってる感じが刺さったんでしょうね。
今では「透明少女」も大好きです。あのシンプルさが直情的で感動的だと思う。
というわけで「NUM-AMI-DABUTZ」が入ってるこのアルバムも割とすんなり聴いた。
聴いた当時はまだ音楽聴き始めだったので驚きとかもなく、ロックバンドってこういう感じなんだなーと思った。そんなことはないんですけど。
やっぱ前半がカッコいいな―と思う。「INUZINI」と「NUM-AMI-DABUTZ」と「Tombo The Electric Bloodred」が並んでるんですよ? 凄まじいよな……。
後半は「Frustration in my blood」が好き。歌詞的にも音的にも非常に混沌としたアルバムを無理やり感動的に持っていってる感じがしなくもない曲だけど、そこにリスナーフレンドリーさというか優しさを感じて好き。
16. 旅人と、その恋人 / OTAKU-ELITE Recordings (2010 / 東方アレンジ)
東方アレンジなんですが、このアルバムは込み入ってまして大きく分けて2つのコンセプトがあります。
タロットカード三部作
このアルバムを含んでタロットカード三部作「旅人と、その恋人」「戦車を駆りて、■■は」「貴女が生きる、この世界」という構成でして、その最初のアルバムとなります。
計22曲それぞれにモチーフとなったタロットカードが設定されています。
界隈についての音楽
こちらが肝でして、東方アレンジは往々にして東方Projectとその世界観・キャラクターの二次創作という作品が多いですがこのアルバムは東方Projectを取り巻く現実のコミュニティについて描いたものになります。
次作「戦車を駆りて、■■は」に収録されている曲ですが「虹輪」は「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」の大バズリを題材にした曲です。
そしてこれを作ったOTAKU-ELITE Recordingsというのはそれを間近で見ていたIOSYS所属D.wattさんの個人サークルなんですね。
いろいろ書きましたが僕はD.wattさんの東方アレンジがめちゃくちゃ好きで、タロットカード三部作は本当に何度も聴いた。
基本的にはクラブミュージックの人なんですけどこのアルバムは十八番のポップなハウスをメインにジャジーな曲やアンビエントな曲で構成されています。お洒落なコード選びやメロディ改変が多くて、聴いていてとても楽しいし綺麗な音楽だなと思う。
冒頭「From here to anywhere」とラスト「みんな恋をしてる」が好きで「From here to anywhere」はそれこそ導入に相応しい門出を祝うような雄大で晴れやかな雰囲気の曲。
「みんな恋をしてる」はピアノの優美な響きとサビで一気にキラキラした音が溢れるのが印象的な曲なんですが僕がこれ大好きなのは結局のところセプテットのアレンジだからだと思う。「恋人」にレミリア・スカーレットを当てはめてくれて本当にありがとう。レミリア・スカーレットは世界に恋してるんだからよ……。
17. Family Record / People In The Box (2010 / 邦楽)
People In The Boxは僕がこの世で一番好きなロックバンドです。
ピープルを初めて聴いたのはBird Hotelが出た頃なんで2008年くらいですけど、めちゃめちゃポップなメロディをややこしくて小難しい変拍子に乗せてお届けされている感じとアルバム全体をテーマで包括するコンセプト主義なスタンスが非常に刺さった。今でもコンセプトアルバムというものは大好きだけど、コンセプトアルバムという概念に初めて出会ったのはピープルのアルバムだと思う。そういう点で非常に自分の人生に影響を与えている。
そしてFamily Recordはそんな初期ピープルの結実ですね。前述したポップさと(逆説的ですが)取っつきやすい小難しさ、それに加えてそれ以前のアルバムよりも多彩になった音のアイデアに、ユーモアが増した歌詞。
そして何と言ってもとにかく全ての曲と流れに無駄がない。「東京」「アメリカ」「ベルリン」の導入、ピープル永遠のアンセム「旧市街」そして「スルツェイ」から「JFK空港」に至るクライマックスは本当に感動的。
18. PIZZICATO FIVE / PIZZICATO FIVE (1999 / 邦楽)
ピチカート・ファイヴは元々親が聴いてたんですが、本格的に聴き始めたのは結構音楽を聴くようになって渋谷系に手を出し始めた頃だと記憶しています。
「自分を構成する」という観点で言うと、HelveticaNeue Boldが好きなのは完全にピチカート・ファイヴの影響ですね。っていうかコンテンポラリー・プロダクションの影響だな。信藤三雄さんも亡くなってしまった……。
後期ピチカート・ファイヴは暗いという定説がありまして、このアルバムも暗いです。そういう「オシャレな曲で暗いことを歌う」という在り方が自分には刺さった。
ナンバガは後期から聴くわ変拍子に惹かれるわ「暗い曲」というお題目に惹かれるわ、つくづくめっちゃスノビッシュな音楽の聴き方してるな。
暗いんですが、このアルバムの暗さはフィクションめいている印象もあります。「連載小説」「あなたのいない世界で」の流れはピチカート・ファイヴのカタログの中でも随一に重い流れですが、しかし映画音楽的な洒脱さのあるバックトラックも相まってどこかフィクションっぽさを感じるんですよね。そこもまた、消費しやすい暗さを求めてた当時の自分には合ってたのかもしれない。
今聴くと、このアルバムの前作「プレイボーイ・プレイガール」の方が全然重いっすね。「テーブルにひとびんのワイン」から始まる3曲は完全に小西さんの私小説だし。
19. Kid A / Radiohead (2000 / 洋楽)
で、レディへはKid Aを選ぶっていうのがスノビズム極まれりって感じですけど僕がレディへを初めて聴いたのは12歳で最初はOK Computerだったと思う。Paranoid Androidがやべー曲というのを見かけて聴いた。でもあんま凄さがよくわかんなかった気がする。
Kid Aは結構一発で気に入った覚えがあります。
語弊を恐れず言うと、何をやっているか・やりたいかがわかりやすかった。
元々非ロック的かつ暗いアルバムというのは知っていて、かつ聴いたのはもうゼロ年代も終わりだったので取っ付きにくさみたいなのは全然感じなかったんですよね。
音もスッキリとしてシンプルでOK Computerのような込み入った感じもあまり感じず、すっと入れた覚えがあります。
まあでも当時から一番好きなのは「Idioteque」ですよね。結局ダンスミュージックよ。というかこの曲自体はハウスとヒップホップの解体だと思うけど、不気味な響きのコードのループでメロディらしいメロディもサビ以外ないのにすごくポップなのはやっぱり偉大なバンドって感じですね。
あと「Kid A」も好き。ポコポコドコドコ鳴ってて気持ちいい。もちろん「The National Anthem」も好きです。
あと「Optimistic」、のラスト25秒。なんか急にジャズファンクみたいになるあのセクションめっちゃ好きなんですけどあれに触れてる文章を見たことがない。
20. 悲しい耳鳴り / SPARTA LOCALS (2002 / 邦楽)
これも暗い音楽です。これを聴いたのは結構最近で、2015年くらい? 全然最近じゃねえな。
とにかく初期スパルタの歌詞が大好き。初期の安部コウセイさんは混乱して鬱屈した心情を鮮やかな風景描写に投影して描くのがめちゃめちゃ上手い。
「GRUNGY SISTER」の歌い出し「七半バイク煙上げて夜を切り裂いたら、そこから星達が綺麗に紅塗って、海で背泳ぎをしている、あの娘を照らすだろう」かっこいい〜〜〜〜〜〜〜!! こういう歌詞が書けるようになりてえ。
安部慎一さんの作品は恐縮ながら読めてないんですけども、ガロ系漫画的な視点は子に受け継がれてると思う。映像的かつ陰影の強い感じ。
そんな歌詞がか細いツインギターとベースとドラムが絡むポストパンクの上で歌われるんで、もう最高ですね。
全曲好きなんですがやはり「GRUNGY SISTER」が白眉だと思います。あと「パーフェクトソング」も名曲。
21. HELL-SEE / Syrup16g (2003 / 邦楽)
私が聴いた初めてのSyrup16gの曲、それは「正常」で私は10歳でした。こんな暗い曲を10歳で聴く私はきっと特別な存在なのだと感じました。
鬱ロックという括りは今思うと大変軽薄なものだったと思うけど(括られていたバンドに罪はありません)その括りに人生を左右された人間もいるということを知ってほしい。ニコ動で「鬱ロック集」みたいなのを作ってた人たちに知ってほしい。このアルバムは僕の人格形成に大変な影響を与えました。
ま〜〜大変に良いアルバムですね。シロップのアルバムで一番好きだし一番思い入れがあります。
攻撃性と諦観と怠惰とユーモアと狂気と優しさというシロップを構成する要素のほとんどが詰まっている。
音もシロップのアルバムで最も80年代ロック(というか主にThe SmithsとThe Police)からの影響を反映しており、Message In A Bottleって感じの柔らかな音色のコーラスギターがいっぱい聴けるので好き。篭った音質も良いですよね。
15曲あるのに全くダレない、非常に構成力の高いアルバムでもある。散々掻き回すけど「パレード」でいい感じに締めてくれるあたりリスナーフレンドリーだし。名盤ですね。
22. 回帰する呼吸 / the cabs (2011 / 邦楽)
邦ロックのサブカル系マスロック方面に絶大な影響を誇る偉大なバンド。
リアルタイムでは「二月の兵隊」を聴いていたくらいで追っておらず僕が聴いたのは解散直後だったと思う。なぜこんな素晴らしいバンドを見逃してたんだ……となりました。
そのあまりにもサブカルクソオタクを狙い撃つ世界観とアニソンに通じるキャッチーなメロディがアホみたいな手数のドラムの上で歌われる様は当時中学生だった自分にダイレクトヒットし、白状するとまんまcabsに影響を受けたポエムを書いていた。
で、個人的にはやっぱ「回帰する呼吸」が最高傑作だと思う。僕が人生で二番目に聴いた曲「camm aven」が入っている。これ「camn aven」って表記揺れありますけど「camm aven」ですよね?
23. Stray Light / wintermute (2009 / ボカロ)
ボカロでシューゲイザーをやる、いわゆる「ミクゲイザー」というジャンルに凛然と輝く名盤。というか多分ミクゲイザーで一番有名だと思う。
聴いたのは2012年頃だと思う。当時は「Mint Tea」「Postscript」「Fury, Melancholy and Joy」が大好きだった。
もちろん今も全曲素晴らしい曲だと思うけど「Jupiter Pop」と「Song of Pixie」が今の自分的には双璧を成す。
「Jupiter Pop」のドライブ感、そして何と言っても「Song of Pixie」の高らかなリフによる浮遊感が最高です。
24. BGM / Yellow Magic Orchestra (1981 / 邦楽)
教授と細野さんが喧嘩してた時期のアルバム。(このアルバム以降全部そう)
前述「NUM-HEAVYMETALLIC」や後述「レティクル座妄想」もそうなんですけど、音楽を聴き始めたかなり最初期に聴いたので他の音楽と比較できず、というわけで先鋭的な作品であるにもかかわらず特段大きい衝撃を感じることもなく「へーYMOってこういうもんなんだな」と流してしまった。
流石に今となっては1981年にあってこれがどれほど邦楽において先鋭的かは頭では理解してると思うけど、どっちかというとこのアルバムについて自分が書く上では今聴いてもポップで楽しい、という点を重視したい。
全曲4:33か5:23で収めてるのがまず意味わからんしヒップホップもあるしドラムンベースっぽいのもあるし、あと教授がパクリにキレてボイコットした*1名曲「CUE」もあるしでとてもバリエーション豊かでエンターテイメント的、かつ全体的にダークな雰囲気で統一されてるのがやはり名盤たる所以だと思う。
そして何より僕がYMOで一番好きな曲「MUSIC PLANS」が入っている。実質この曲しか書いてないのにこのアルバムでの教授の才気走りと存在感は凄まじい。それはある程度自由にやれて生き生きしている次作「TECHNODELIC」より強く感じる。
教授の正しく前衛たるスタンスが史上最も聴きやすくポップな形で出力された「MUSIC PLANS」、そして全ての音が異常にかっこいい「1000 KNIVES」のリテイクが入っている。最高ですね。
細野さんとユキヒロさんについても書きたいんだが二人が作った曲で一番好きなのがそれぞれ「LOTUS LOVE」と「PURE JAM」なので……。BGMだと全曲好きではあるけどやっぱA面の2曲。
25. Visions & Flowers / えこまる (2010 / ボカロ)
これもミクゲイザーの系譜にあるアルバムだと思う。ただシューゲイザー一辺倒ではなく、ナンバガフォロワー的なジャキジャキしたオルタナロックと浮遊感の強いシューゲがほぼ交互に入っている。
このアルバムはリストに選んだ42枚のうち最も過小評価されている。僕以外にこのアルバムの話をしている人を見たことがない。限定1000プレスで未来永劫再販はなく(公言されている)ストリーミング配信もされてないので母数が少ないから当然なんだが……。
ただ、個人的には本当にボカロでやってるオルタナギターロックとしては最高峰に位置するアルバムだと思っているので興味ある人は探して聴いてみてください。「キラーバンビーズ」が白眉。
26. 天国と地獄 / カーネーション (1992 / 邦楽)
ポップだったりロックだったりするバンド、カーネーションのアルバム。
このアルバムが具体的にどのように自分を構成しているかは自分でも上手く言語化できないのですが2015年の夏にアホほど聴いていたのを覚えている。夏のアルバムなんですね。
そのまんま「The End of Summer」という曲が収録されています。この曲はめちゃくちゃ名曲。なぜかアルプス一万尺のサンプリングから始まっててそれは未だに意味がわからないんですが名曲。
「夏のおわりのどろどろアイスクリーム まあるい目をしてきみはあきれてる」という出だしのフレーズからもう詩情が溢れていて、夏の気だるさと甘酸っぱさを思わせる。
全編良いけども、やはり「The End of Summer」からラストの表題曲に至る3曲の流れには90年代の夏を真空パックしたような色褪せない空気感を感じる。
全体的に90年代っぽいけど今聴いてもとてもいいと思います。
27. THE WORLD IS MINE / くるり (2002 / 邦楽)
ロックチームくるりのアルバム。
くるりは僕が確か初めて新譜を買ったロックバンドで、それから14年ガッツリ全作追っているので多分一番ファンと呼べるバンドだと思います。
で、くるりで一番好きなのがこのアルバムで、アホほど聴いた。あと図鑑とTEAM ROCKとアンテナとワルツと魂のゆくえもアホほど聴いたけどこのアルバムを一番聴いた。
とにかく個々の楽曲もいいんですけどアルバムトータルで見て素晴らしいアルバム。ある程度躍動感がある曲もひたすらダウナーな電子音が続く曲もアコギ弾き語りもあるけど、通底して虚無感が常に漂っている。全体的にあまりに生気がなさすぎてすごい。しかし暗いわけでもなく、白背景に靴が散らばっているジャケット通りとにかく「何もない」ということを表現している作品。その「何もなさ」は今作に入っているくるりで一番売れたシングル「WORLD'S END SUPERNOVA -Mix ”Matuli”-」が最も端的に物語っている。
恐らくこの虚無感はレディへのKid Aと前年に起きたテロによる情勢不安と2000年を過ぎて日常における明確な方向性を見失った感覚が反映されているものだと思う。ゼロ年代前半を生きる若者としての岸田さんがこれを作らずにいられなかったのも頷けるし、それでこれが出てくるのはすげえなあという感じ。
2000年前半を象徴するアルバムだと思います。
28. 不眠画報 / ごりら公園 (2018 / 東方アレンジ)
今回選んだアルバムで一番新しい。一番新しいのが2018年か……。
「不眠画報」というタイトル、そしてジャケットが示すように夜を生きる存在についてのアルバム。
アルバム全編に通底する夜の空気感。静かで猥雑でひんやりとしていて不気味で心地良い。
アルバム冒頭1~3曲目の流れ、素晴らしすぎる。というか「D・W・D」「ロボトミー」がエグいくらい名曲。「D・W・D」で開放感のないひねくれた、でも物凄くカッコいいメロディで疾走し、かと思えば「ロボトミー」で思いっきりポップに疾走するハイテンポ2連続で畳み掛けるのが凄まじい。
ラストも「くちなし」で凄絶なクライマックスを迎えたあとの包み込むような「不眠画報」という配置が素晴らしいです。
「ロボトミー」「くちなし」でせいよしをやってるのも個人的にポイントです。「何度もきみを呪った」。
もちろん他にも「絶対安全火遊」「20」「誘我灯」などなどすさまじく良い曲が揃っており、全く無駄がない完璧な夜のアルバムだと思います。
29. フジファブリック / フジファブリック (2004 / 邦楽)
フジファブリックというバンドの1stです。
これはおそらく2008年か9年あたりに聴いていると思います。当時モグモグフヨードさんというニコニコ動画で活動している絵師の方がいまして、その人の動画のBGMに使われていて知りました。
出たのは2004年ですが当時デビューしたてのフジファブリックは四季盤という体で春夏秋冬テーマで4枚のシングルを出すという試みをしていました。このアルバムにはそのうち春夏秋の3枚のシングル曲が入っています。
その3曲は全部名曲。「桜の季節」「陽炎」「赤黄色の金木犀」、このうち特に「陽炎」「赤黄色の金木犀」はかなりすごい。
「桜の季節」もフジファらしくてとても良い曲です。いかにも感動的な曲が作れるような春と桜テーマの曲なのにすっごい醒めててひねくれた性格の歌詞にらしさを強く感じる。
それを超えて「陽炎」「赤黄色の金木犀」の完成度は圧倒的。一般的なバンドなら絶対ここがキャリアハイだと思う。フジファブリックの場合、この前に「茜色の夕日」「笑ってサヨナラ」この後に「若者のすべて」というキャリアハイ少なくともトータル3回来てるので一般的なバンドではない。
夏の郷愁と焦燥とを描いた歌詞と駆け抜ける演奏が日本の夏の湿度の高さを思わせる「陽炎」と、変わる季節の中でふと香りに胸の奥の記憶を想起させられてしまう「赤黄色の金木犀」、どちらも素晴らしい曲。
歌詞の表現力もさることながら、「陽炎」での力強いピアノやギターソロなど演奏での表現力が凄まじい。それの象徴が「赤黄色の金木犀」のサビ前の演出ですね。
春夏秋冬をテーマにするって相当表現力に自信がないとできない芸当だと思うんですが、やるだけのことはあります。
アルバム曲では次作以降フジファのもう一つの顔となっていく奇怪さを持った妖しげな曲が多く収録されています。特に「TOKYO MIDNIGHT」の曲展開と歌詞は良い意味でかなりキモい。あと「サボテンレコード」も名曲ですね。
秋になる度に絶対「赤黄色の金木犀」の「期待外れなほど感傷的にはなりきれず」というフレーズとメロディを思い出す。
30. BeVeci Calopueno / モーモールルギャバン (2011 / 邦楽)
モーモールルギャバンというバンドがいます。モールルも全作ガッツリ追ってるので相当なファンだな。
いやモーモールルギャバンは本当に唯一無二の素晴らしいバンドなんですよ。ちょっと他のバンドより女性の下着が好きなだけのバンドなんです。
「BeVeci Calopueno」は前作「野口、久津川で爆死」と次作「僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ」のいいとこ取りな気がする。
モラトリアムも終わり、なんだか冷静になり自省をし始める時期の心情がよく出ている音楽というか。どうしようもない情けない自分と、それでも続く日常が寄り添うような目線で綴られている。
「変な人」の音数少ないが故の研ぎ澄まされた美しさ、「Kitchen」のオルガンで表現される奇妙な荘厳さと歌詞のスケールのミスマッチさが魅力的だったり、「rendez-vous」の大団円っぽい雰囲気でありつつも迷いながら答えが出ず終わっていく、そこに誠実さを感じたり。歌詞の表現力と演奏の表現力とが相互に作用した魅力的な楽曲の数々が収められています。もちろんコークハイもATTENTION!もいい曲。
そしてモールルで僕が一番好きである曲「821」。エレピ、ベースライン、ドラムのフレーズと歌詞のリズム感の全てが気持ちいい。
31. モジャのみぞ知るセカイ / モジャン棒 (2013 / 東方アレンジ)
何を隠そうこの世で一番好きな東方アレンジサークルがモジャン棒です。刺々しい音でいかにも不健康なロックをやっている。カッコイイ。
そして「モジャのみぞ知るセカイ」は東方地霊殿のBGMをアレンジしたアルバム。東方地霊殿というのは東方Project史上最も不健康で不健全な作品なのでモジャン棒に合いまくるんですよね。
あと2013年というリリース年。懐かしい。2013年って古明地姉妹第一の絶頂期だし(第二絶頂期はおねえちゃんが11点発言したとき)、前年の名作サブタレイニアン・ごみ屑・ローズとかこいここのアツさもあってのこれだったなぁとノスタルジー。
アルバムの話に移りますと、全曲かっこいいです。
イントロダクション的なインスト「パンデモニウムパーティー」から「脳無オーケストラ」が始まる瞬間、かっこよすぎる。そこからの4曲はすべてかっこいい。
このかっこよさは多分に音圧の高さがあって、全体的にかなりコンプ掛けて潰れてザラザラになった音になっています。またオルタナの宿命というかギターの高音がかなり強調されている。そういったミックスでかなり荒くもあるんですが、それが演奏のテンションと相まってすごくかっこいい。
「脳無オーケストラ」の「少女さとり ~ 3rd eye」をベースとした陰鬱なメロディとブチギレたハイテンションさが最高です。古明地さとりの性格の悪さが克明に表れている。「放解メランコリア」も水橋パルスィの性格の悪さが表れており良い。
中盤のインスト「優勢劣等人間」から「心無マスホリック」の4曲、ここからの4曲もすべてかっこいい。
でもやっぱり「心無マスホリック」を特筆すべきと思う。原曲は古明地こいしのテーマ「ハルトマンの妖怪少女」。前半の曲よりは抑えめのテンションの四つ打ち曲ですが、そのテンションのフラットさがこいしちゃんの虚ろな心象風景を思わせる。メロディとコードも切なげでこいしちゃんの宿命を思わせる。
その後、「紡織カーニバル」で一回テンションを落として「遠景ライン」と「荒天ロック」で爽やかに終わる流れ、王道ですがやっぱり良いですね。
斯様に素晴らしいアルバムです。「モジャのある生活」と迷いましたが一番聴いたこちらで。
32. RADIO ONSEN EUTOPIA / やくしまるえつこ (2013 / 邦楽)
ここに収められたシングル群は邦楽史上でも類を見ないくらい粒揃いだと思う。というか、この後のまるえつソロリリースとセットで一枚のアルバムとして出ていた場合、邦楽史上に残る稀代の名盤だったんではないかと思う。何年かかるかわからんけど。
それくらいこの頃のティカ・αさんのソングライティングは凄まじかった。寡作になるのもさもありなんという感じです。
「ノルニル」で始まり核に「少年よ我に帰れ」があり「ヴィーナスとジーザス」あり「ときめきハッカー」あり、そして「ロンリープラネット」で終わる名曲目白押しアルバム。間に挟まれたみんなのうたカバーも良い繋ぎになってます。
でもやっぱ「ロンリープラネット」が本当に名曲だと思う。この世に存在する9分36秒の曲で一番良い。この曲ほど9分が一瞬で過ぎ去る曲を知らない。
33. 幻想事変 / 岸田教団&THE明星ロケッツ (2007 / 東方アレンジ)
自分のロックバンド原体験はアジカンとバンプと並んでこれだったかもしれない。
勿論当時は椎名林檎もナンバガもブランキーも知らない。
でもいくつか散りばめられた元ネタはあくまでおまけとして、このアルバムはとても素晴らしいオルタナロックアルバムだと思う。
詳細はこれを読んでください。2018年の記事なのでいろいろとあれなんですけども。
> 上記した通り、文脈的に東方ロックアレンジが好きなら外せないと個人的には思いますし、東方を知らずともロキノン系ギターロックが好きならば気に入るであろうアルバムではないかと思います。何しろ、抽象的な表現ですが「2007年のギターロック」っぽさが全編に渡って封じ込められているアルバムですからね。ボカロの台頭、そしてそれに影響を受けた四つ打ちロックの登場、またポストロックが一般的になったことによってどんどんと邦楽ロックが複雑化していく寸前のゼロ年代的ギターロックの様式美が現れているアルバムです。
でもこれは未だにほんとそう思う
34. レティクル座妄想 / 筋肉少女帯 (1994 / 邦楽)
私が聴いた初めての筋少のアルバム、それは「レティクル座妄想」で私は12歳でした。こんな奇妙なアルバムを12歳で聴く私はきっと特別な存在なのだと感じました。
おそらくSyrup16gと並んで僕の人格を歪めたであろう偉大なバンド。自分を構成しているというか構成させられたというか。
レティクル座妄想というアルバムは端的に言うと「この世で愛されなかった者たち」についてのコンセプトアルバムです。
1曲目から自殺した人間が乗る列車にニーソックスの少女と同席するという根暗サブカルクソ野郎の妄想すぎる歌なんですが、その後もいろんなねじくれきった人間たちが次々と登場しては消えていきます。殺した4人の少女の妄想に苦しめられる男の歌とか沼に沈んだ女の子の葬式に天使が現れてすべてを燃やし尽くす歌とか。
ポップサイドの代表曲である「香菜、頭をよくしてあげよう」も今堂々と発表したら燃えるだろこれ……。
筋少は10代の頃に出会わなければもう刺さることはない音楽だと思います。まあだいたいのロックバンドってそういうもんかもしれない。
そういう意味ではなんというかいつまでも聴き続けるバンドではない(少なくとも90年代筋少は)とは個人的に思うんですけど、でももう聴かずとも折に触れてフレーズが勝手に思い出させられてしまう。
「ワダチ」で引用された「今、私は世界全人類の気晴らしの一つとして死んでいくのである」とか。
月光蟲収録「グリグリメガネと月光蟲」の「何か嫌なものを見てもそれは人生の修行さ」とか。フェミニストの兄はいくじなしだし、何もかも上手くいかないのはルリヲのせいなんだよな……ルリヲを殺しに行かなくちゃ……。
35. ゆるポート辞典 / 緊急ゆるポート (2013 / ボカロ)
ノイズジャズポップバンドらしい。
たしかにジャズのようなポップスのような、とてもいいメロディと自由な演奏に載せて可愛らしいような奇妙なような歌詞を歌っている。
全曲名曲なんですが「9FUKU」「70」「M85星雲」「歌詞が来ないの歌」が名曲 of 名曲。
「9FUKU」は躍動感のある四つ打ちに載せてとにかく空腹であることを歌う。
「70」はジャズなゆったりした心地いい曲。なんですが譜割りがえげつないというか押韻とかリズムとかそういったあれこれ何も考慮されずにメロディにそのまま言葉が当てはめられている。なので「しばらくしてその店に行くとそ/の店はつぶれていました先日」みたいな区切りを平然とする。これを聴いたときはかなり衝撃というかパラダイムシフトを感じた。
「歌詞が来ないの歌」はこれは少しR&Bっぽいすごくおしゃれな曲。夜に聴きたいアダルティな曲なんですけど歌詞はひたすら締め切りすぎても歌詞が来ないということを歌っている。
そして「M85星雲」。歌詞にまったく情報量がない、「M85で眠っている」ということしか歌っていないのにそのぼやけた音質とオルガンの派手すぎない心地良いメロディがなんだかすごく感傷的な気持ちになる曲。
36. ヘヴンリィ・パンク:アダージョ / 七尾旅人 (2002 / 邦楽)
全ての宅録好きかつひねくれインディーポップ好きのバイブルであろう稀代の名盤。
まず2枚組2時間超えというボリューム、これを見てなげえと見るかボリューミーでめちゃくちゃお得と見るか。これでボリューミーと思えたら適性あると思います。
その中身もめちゃくちゃ濃厚でバラエティ豊か。なんですが、意外と聴き疲れはしない。これはもう何十回と聴いてるので慣れかもしれんけど。
音楽性の根底がフォーク+エレクトロニカで、いろんな音が散りばめられてはいるものの歪んだり圧の強い音は少なく、アコギとふわふわした輪郭が曖昧な音色が鳴っているのでどの曲もすごく清らかというか透明感があります。
またメロディ自体はそこまでひねったものはなく、どの曲も素直なメロディと感じます。
でもここまで書いてて、これはこのアルバムから20年経ってポピュラー音楽の情報量があまりにも膨大になっていったので相対的にスッキリして聴こえるだけかもと思ったりもした。相当情報量の多いアルバムではあると思います。
「耳うちせずにいられないことが」「これは花びらかな、そうじゃないかも。」「シュリンプ(ガリバー6)」「天使が降りたつまえに」「ナイト・グロウイン」大好きな曲を挙げればきりがないですが、「昔の発明」という曲がとても好き。
疾走感のあるリズムに流れるような曲展開、そして美しさと不安をともに感じさせるようなメロディ。そこに独特な言語感覚で色彩と情景を強く想起させる表現が相まってとても鮮烈な音楽だと感じる。「全人類紅葉してしまえ」
また、オープナーの「息をのんで」も素晴らしいです。この天国のようなどこかと天使のような誰かについての壮大で果てしない物語の始まりがこんなにもこじんまりとしたスケールの歌であること、それ自体が感動的であると思う。
「君が大好きだよ」から始まるアルバムとか素敵じゃんね。
37. LIFE / 小沢健二 (1994 / 邦楽)
親が聴いていたシリーズ。
このアルバムについてはいろんな人がいろんな角度で語っている、それこそ日本のポップカルチャー史に残る名盤であることは間違いないので分析的な目線で書くことはない。というか僕の知識では無理です。
たまに聴いてはいいなあと思うそんなアルバム。
ただ、折に触れて「10年前の僕らは胸を痛めていとしのエリーなんて聞いてた」みたいなフレーズを思い出すことがあって、「ラブリー」とか「ぼくらが旅に出る理由」を無性に聴きたくなるときがあるので自分を構成してることは間違いないんでしょう。
そういや再現ライブやってましたね。行きたかったけどチケット取れなかった。
38. ぞうの王様 / 真空メロウ (2003 / 邦楽)
みなさんは真空メロウを知っていますか?
ゼロ年代ロキノン系好きの間では知名度あると思う気がするんですけど真空メロウというバンドがいましてその1stアルバム。
音楽性はスリーピースで、ギターは歪みすぎずアルペジオを多用したりディレイを使って透明感を表現しているポップなロック。
変拍子要素もあるんですけど、マスロック的な演奏の厳密さみたいなのはなくあくまで楽曲に必要な要素としての変拍子として使われている印象。
このバンドの何がすごいかというと世界観がすごい。
変拍子要素が入っている、というくだりから察せるかもしれませんが曲も歌詞もかなりねじくれた音楽。
ただし骨組みはポップなメロディのオルタナギターロックというのは徹底していて、だからこそ奇妙な要素が目を惹く。
1曲目「レオナル堂」を聴くだけでも一目瞭然だと思います。かなりプログレッシブな曲。曲展開に合わせてチャンネルが切り替わるというPVが非常に楽曲の世界観を良く表現されてるので一見の価値ありです。
それでいてメロディは日本のポストハードコアの流れを汲むような情緒的なメロディ。めちゃめちゃ良い曲。
他にこのアルバムには「ポピパペポ鳥」「ずわいがに」という名曲も入っており、いやタイトルでオチてるんですけどこの2曲しっかりめちゃくちゃ良い曲なんですよ。
「ポピパペポ鳥」は軽やかなイントロ~サビ前からサビで一気に音が厚くなり歌詞とともに世界が広がっていく印象を受ける曲。「ずわいがに」はベースラインを軸に淡々とずわいがにの生活が歌われる曲なんですけどこれもメロディがめちゃくちゃ良いしサビがエモい。シャウトするでもなく気持ち強めに声が張り上げられるに留まるんですが、メロディと相まってなぜか胸を打つ。嘘じゃなく本当に。「こたつの中でずわいがにをもいでは投げ もいでは投げ」って意味不明な歌詞なのに。
こういった奇妙な世界観が充満しているアルバムです。名盤です。
39. 三十世界2 / 進行方向別通行区分 (2010 / 邦楽)
理論関係が2枚も入っているという。シフォン主義も全然このリストに入るレベルなんですけどさすがに入れません。
「電話がリンリンリン 中山 中山出てこい」「悪い大人がいたらすぐ俺に言え」「そしてあっというまに子だくさん そしていつかはおかあさん」「スーパーゼウスに年金はいらん」「今年も今 雪が降る 寒い夜はまわしを締めていこう」「ディズニーランドに行きたいなー(それは無理ー)」
すさまじくキャッチーな音楽にすさまじく意味不明な歌詞が乗る。ハイセンスすぎる。
でもなんというか、本当にいい歌詞だと思う。
聴き手を楽しませるという点で純粋な音楽はこういうものだとすら思う。純粋な音楽って何だという話ですが。
40. ティーンエイジ・ネクラポップ / 石風呂 (2012 / ボカロ)
世代! よく聴いた。
そして「シーサイドモーテル」は今でも折に触れてよく聴く。自己憐憫とフラストレーションと人生の始まりの歌。鬱屈した感情を描きつつ優しく寄り添ってくれる曲で、とてもエモーショナルだと思う。
もちろん「ゆるふわ樹海ガール」「魔法電車とキライちゃん」も好きだし「浮かれた大学生は死ね」は中高生のときカラオケでよく歌っていた。
表題曲「ティーンエイジ・ネクラポップ」で描かれているように、モラトリアム真っ只中の少女たちとモラトリアムが終わっても抜け出せない大人たちを歌ったアルバムで、そういう点がやっぱり未だに刺さる部分がある。
41. やめも / 全自動ムー大陸 (2014 / ボカロ)
ここまでポップかつ奇妙なボーカロイドのアルバムを他に知らない。
確か「冥立とうめい公園」がBandcampでFeaturedトラック(アルバム試聴時に一番最初に流れるトラック)になっていてそれで聴いて一発で気に入ったのが出会いだった。「冥立とうめい公園」という曲名のセンス!
そしていざ本編を聴いて「てとてと(しましま)」からの「今夜はミサイルが落ちるから下着を僕にくれ」でノックアウトされました。ボカロ史上最強のアルバムの始まり方だと思う。
オルタナ系の曲とアンビエント系の曲が半々で入っており、そして「セルアウト(グッド・バイ)」で終わるという構成も完璧すぎる。
全ムーさんのアルバムの中でも非常にキャッチーなアルバムなので聴いたことない方はぜひ聴いてください。無料です。なんでこんな名盤が無料なんだ。「どこへいく」の10周年記念版に続いて「やめも」も出してください……。
42. diorama / 米津玄師 (2012 / 邦楽)
僕が人生で一番聴いたアルバムって米津玄師のYANKEEなんですけど、好き度で言うとdioramaのほうが好きだと思う。
勝手な考えながらおそらく米津玄師好きの人間にはdiorama~YANKEEの先に行ける人間といつまでもdiorama~YANKEEに縋り続ける人間の二種類がいて、後者も後者である自分は今の米津玄師にも未だにその残滓を探している。
「さよーならまたいつか!」を聴いてそのフラストレーションと熱に初期を思い出したりしつつも、その当時の曲にはなかった飄々とした軽やかさを美しいと思ったりもする。
dioramaはタイトルが示す通り客観的に見ると本当に出口がない世界観でこの先はないと思わされる。
全体的にローファイな音質で、この頃の特にボカロ出身のアーティストにはほんと珍しくハイがあまり強調されていない篭った音になっている。
基本構成はギターとベースとドラムで、他にもベルやシンセなど細やかな音が散りばめられており、決して音数が少ないわけではないのにも関わらずアルバム通してきらびやかな音が一つも鳴っていない、色で例えるなら常にモノクロであるという印象を受ける。
これはアルバムジャケットの印象に引っ張られている可能性もあるが、収録曲を考えても多分このアルバムのジャケットがカラフルではミスマッチだろうと思う。
そんな音の上で語られるポジティブでもネガティブでもない物語たち。ドラマチックな出来事はすべて過去に終わっており、平坦な日常がひたすら続いていく。
「街」と「抄本」という円環構造から、このジオラマとそこにいる人々は一生このまま変わらないでここにありつづけるだろうと確信する、その未来のなさ、救いのなさというか救いも必要とせずに淡々と続いていくであろう世界を本当に心地よく感じる。
「乾涸びたバスひとつ」が本当に大好きで、Cメロの米津さんの叫びがこの人の作った音楽のなかで最もエモーショナルな瞬間であるというのは再三書いている通り。
もう米津さんはこの地点にはいないし、「乾涸びたバスひとつ」「vivi」「恋と病熱」みたいな歌詞は書かれることもないと思う。それらのように、楽曲を一つの完結した物語として作り込んで提示するよりも「まちがいさがし」や「がらくた」のように普遍的なシチュエーションを描いて聴き手の心情にフィットさせるほうが健全であるとも思う。
それでもまだ、歌の途中で歌詞を全無視して謎スキャットをカマすような異常な音楽を探し求め続けています。
こんな音楽を一生に一度でいいから作りたい。
お疲れ様でした
多分ここまで読んでる人はいないだろうが読んでくれてたらありがとうございます。
前作的な感じでこんな記事を書いており、これと合わせて読めば僕の好きな音楽がすべてわかります。
おまけ
ここ10年で出たアルバムで無理やり42枚ひねり出そうとしましたが、出なかったので36枚になりました。
だいたいここで出てる人たちですね。
宣伝
零細ボカロPです。作った曲を聴いてくださると幸いなり。
今年の8月に出したアルバム。以上に挙げた素晴らしい楽曲たちと比べると大変見劣りするががんばってつくった。
この記事にいる人たちを聴いて育った人間が作った音楽です。
*1:よく聞く話だけどこの話の出所がわからん