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あたまのわるい音楽ブログ

ピーナッツくん「Tele倶楽部」全曲感想

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 VTuber、ピーナッツくんの2ndアルバム。2021年リリース。

1. 笑うぴーなっつくん

 ピーナッツくんというキャラクターをメタ的に俯瞰しつつ、このアルバムでのスタンスを表明するリリック。初っ端から毒をカマしてくるのが前作「False Memory Syndrome」とは異なるこのアルバムのモードを感じさせます。
 マシンガン的に繰り出される「日々意味ないことで満たす feeling から生まれてる新たなクラシック」などのフレーズにピーナッツくんの表現者としての矜持を感じさせて非常にカッコいい。
 自己言及的な楽曲という意味で「ピーナッツくんのおまじない」と同じ類の曲ですが、段違いに増した攻撃性によりこの怨念と欲望渦巻くダークなアルバムの幕開きに相応しい楽曲となっています。

だって運動会とオリンピックは違うだろ?
君がいっとうしょうでぼくがビリでもそれは同じレースじゃないんだよ

 マイノリティの牙が光るリリックで最高にクール。

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2. School Boy (feat. もちひよこ)

 前曲の銃声から間髪入れずこの曲のイントロが流れてくるのがまずカッコいい。
 この曲は客演で参加しているもちひよこさんのVTuberとしてのキャラクターも加味してのことか、メルヘンチックな音色と重たいビートという相反する要素が絡むミュージカル的な曲になっています。
「教師と生徒」というメタファーで恋愛の駆け引きを歌っている歌詞ですが、なんとなくピーナッツくんの創作スタイルとして確実に存在しているであろう反骨心を表現しているようにも見えるのが面白いところです。あるいはインタビューの言葉から考えると、本当に人生の先達という意味での「教師」をもちひよこさんは演じているのかもしれません。
このアルバムを貫いている『恋愛』と『VTuber』という2軸の概念を象徴するような楽曲だと思います。

どことって見て正しいこと
ひとつもないね

 ここすき。多分みんな好き。

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3. 風呂フェッショナル (feat. Yaca)

 間違いなくアルバム中最も平和な曲。この曲以外ほぼ全曲シリアスな雰囲気なので、これが無かったらかなり重たいアルバムになってしまっていたような気がします。
「サウナだと好きな人も限られてるかもしれないから風呂をテーマにした」という談ですが(もっと攻めて全編サウナについて語った曲も聴いてみたい)、重すぎないビートに乗ってふわふわした音色が包み込んでくる、のほほんとしたピースフルな雰囲気がまさにテーマに相応しい心地良さです。
 Yacaさんのリラックスした語り口でのフロウも気持ちいい。ラストの掛け合いも(アルバム中では唯一と言っていいほど)「生身」のやり取りが感じられて和みます。

母の腹の中から裸だから
末端あったまったらまた彼方
数える那由多

 しかし何気に韻の踏み方がエグい。確実に踏んでいくという強かさがまたカッコいいです。

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4. My Wife (feat. KMNZ LIZ)

 段々この曲あたりから空気が狂い始めてくるといいますか、ピンク色になってきます。
俺の嫁」という現代日本では既に廃れていながら海外で「Mai Waifu」として未だに生きている概念を冠したこの曲は、誰がどう見てもVTuber←視聴者の一方的な恋というか性愛をぶつける歌。
 物理的に届かない距離に居る魅力的な異性に(メタ的に)思いを寄せる楽曲はかつて「RAINBOW GIRL」や数々のボカロ曲などがありますが、それらとは違って「実在」してるのがかなりタチ悪いです。
 ここまで弱者男性の欲望を代弁しつつ、LIZさんのヴァースでガッツリ脳破壊させてくるリリックを書ける兄ぽこは一体どんな世界を見ているのか……。煌めく音色で溢れたポップでキュートなトラックも相まって、楽曲に含有されている悪意で具合悪くなってくるレベル。
 特にLIZさんが歌うヴァース、これよく歌ってもらえたな……(しかも快諾)ってマジで思います。

楽しみたいならお金払って

 から始まる一連のフレーズはアルバムタイトルとも結びつく、VTuberの一側面を象徴する名リリックかと。

5. messed up! (feat. Marukido)

 女性ラッパーのMarukidoさん参加ということで、他の楽曲よりも更に硬派なヒップホップという趣の楽曲。
 現代日本を取り巻く混沌を象徴したリリックに不気味で蠱惑的なビートが光ります。
 特にMarukidoさん自らの手によるリリックは「人を不快にさせる表現のオンパレード」みたいなレベルですっごい。「風呂フェッショナル」とは別次元の「生身」感を生々しく露出させるこのヴァースを、過剰に理想化された偶像崇拝を行う曲である「My Wife」の後に並べるという狂気の曲順。

ナナナーナナナーペニバンジョイマーン
ナナナーナナナーペニバンジョイマン

 ペニバンジョイマンって何……?

6. zakkyobuilding (feat. チャンチョ)

 外部からのゲストを迎えた曲は一旦終わり、チャンチョのラップをフィーチャーした楽曲。これがまたカッコいい。
 前作では落ち着いたローテンポの楽曲に参加していたのでそこまでラップスキルが表出していませんでしたが、体温低めのローテンションでハスキーに繰り出すフロウがマシンガンのようでとてもクールです。最近更にイキってきたチャンチョのイメージにも合致する尖った印象の曲ですね。

Zakkyo ビル zakkyo ビル
エレベーターに乗って
また上に上がる
カッコいい

「エレベーター」の言い方が好き。
 雑居ビルのアングラ感と、そこで何かすごいことが行われているというエモさが詰まった曲だと思います。

7. skit

 短いスキット。まさにテレクラの通話を想起させるやりとりは大変いかがわしいし、ピーナッツくんの辿々しさにはこっちまで恥ずかしくなる。
「おしゃれになりたい!ピーナッツくん」というキャラクターはそもそも「まだ自覚していない(幼い)コンプレックス」が一つのコンセプトになっていると思ってるんですが、この曲もそういった5歳児的なコンプレックスが見て取れる作品ですねっていうのは多分深読みしすぎ

8. KISS (feat. おめがシスターズ)

 前曲のやり取りを引き継いで「いけないことをしたいよ」とこの曲に繋げるのがまたイカしてる。
 おめシス参加の曲。雰囲気はなんとなく80年代っぽいダサカッコ良さも感じるところです。
 おめシスを知っている身だとぶっちゃけ台詞にばかり耳が行くというかリオちゃんが頑張って素で(?)話してるのがまず面白いし、おめシスにまさかの歌でなく台詞を任せるのか……みたいなことを無限に考えてしまう。

もうわかったろう
ただ致したいの

 ラストのピーナッツくんの矢継早に繰り出すフロウとそれをおめシスが塞いで終わる展開が本当に痛々しくて切ない。
 このアルバムに入ってる恋愛の曲は、最後の一つを除いて全て一方的な思慕なんですよね。この曲も明らかに相手方は自分にそこまで魅力を感じていないであろう、というのが見て取れるのがとても悲しいし、凄まじい表現力だと思います。ラストの「愛より先に」の余韻が後を引く。

9. 未来NEXTメシ vs yanagamiyuki

 とても好きな一曲。
 バーチャルの先人である初音ミクとピーナッツくんの交互の掛け合いが耳に残る、途轍もなく中毒性高い曲。気づけば「ミート hope に転身 ye」って言ってしまう。間抜けなようにも不気味なようにも聴こえるメインフレーズと重いビートも耳にこびりつきます。

ぼくで飯を食うなんて
気持ち悪いよお前

やながみゆき人間やめ損なっちゃった?
今更なんだ?お前の動物性のタンパク

 まさかのご主人様/ボカロPをdisるというペルソナvs中身のラップバトルの様相を呈するリリックも衝撃的です。
 ミクさんのフロウも、人間のようにも聴こえるしシンセフレーズのようにも聴こえる、自然さと機械感が同居していてとてもカッコいい。

10. Peanuts in Wonderland

 オペラチックなコーラスに導かれて始まる、浮遊感溢れる不気味でサイケデリックな一曲。
「zakkyobuilding」に引き続きチャンチョが参加していますがやっぱり高速で詰め込んで繰り出されるフロウがかっこいい。
「ピーナッツくん」という物語について寓話的に書かれたリリックは全てが示唆的ですが、

1900 何年 から記憶
されたお前はお前じゃないわ

 からのフレーズは特に分かりやすく現実からの離脱を表しています。
 生身としての存在とキャラクターとしての存在、その2つの関係性は前作の「幽体離脱」で歌われているようにまさに夢現と同じようなもので、バーチャルの存在になるということはすなわちアリス・イン・ワンダーランド的なことなんでしょうね。

11. SuperChat

 これを聴いたぽんぽこさんが関西弁で激怒したという一曲。このアルバムで最も攻撃的な曲です。
 リリックの全フレーズが(自分を含む)全てのVTuberへのdisりで成り立っているという凄まじい楽曲。
 これをリリースしようとする度胸にまず称賛を贈りたいし、シーンを批評するという点で非常にヒップホップ的な意味でのリアルを体現していると思います。
 なんつっても曲が良いっていうのが強いですね。シャウトと歪んだ暴力的な音が鬼カッコいい。あと、キレていたぽんぽこさんですらつい口ずさんでしまうフックの中毒性。
「My Wife」にも通じる、より直接的な怨念が渦巻く楽曲ですが、これを聞いていると本当に兄ぽこは普段から一体どういう感情でVTuberシーンを眺めているのだろうかという気持ちになる。

誕生日でもないのに
記念配信で多額を見込めるぜ

 全文引用したい勢いですが、特にここすき。

12. ぼくは人気者

 前曲とのギャップで風邪引くくらい牧歌的な曲。
 ヤギ・ハイレグさんのトラックの雰囲気や仲間へのリスペクトを混ぜ込んだりするところも相まってホームでリラックスしている空気感が楽しい曲です。メイクマネーって感じでイキってるリリックも味わい深い。
 しかしそこに挟まるチャンチョの「ピーナッツくんなに言ってんの?」のコーラスがただでは終わらせないひねくれ感があって好き。

13. ペパーミントラブ (feat. 名取さな)

 このアルバムのハイライト。前曲のトラックがフェードアウトで終わり、煌めくシンセフレーズが入ってくるイントロでもうクライマックスなんだなと感じる。
 ピーナッツくんは個性立ったフックを曲ごとに作るのがとても上手いと思うんですが、この曲のフックはその中でも飛び抜けてキャッチー。そのキャッチーさはピーナッツくんが「ぽんぽこさんこのアルバムちゃんと聴きました?」と問うた時にぽんぽこさんが真っ先にこの曲のフックを歌い始めるほどです。
 キラキラした音色が折り重なる美しいトラックにピーナッツくんの熱の籠もったエモーショナルなフロウが乗っかるところから既にエモい。
 そして「当然ファーストだった」から始まる名取さなさんのボーカルが入る瞬間、ここに間違いなくアルバムの一番のカタルシスが設定されているように思う。そのピュアな歌声とリリックがこのアルバムに込められた悪意も怨念も欲望も全て浄化していくような感覚を覚える。
 まさに少年漫画的なピュアネスのあるリリックですが、トラックメイカーが同じであり雰囲気が似通っている「My Wife」や一方通行だった「KISS」とは異なり、双方向的な繋がりであるという事実に救いを感じます。

致し方ないことぼくしちゃった
のかも頬つねって感じる
あの日の予熱

 ここの「いぇい」好き。オクターブ違いで重なる名取さなさんのフロウがすごく可愛いししっかりラップしてて魅力的。

14. Unreal Life (feat. 市松寿ゞ謡)

 このアルバムを作る動力となったと言っても過言ではない「Unreal Engine」をタイトルに冠した最終曲。
 ピーナッツくんと市松寿ゞ謡さんの歌声、ヒステリックな音色のシンセ、生音のベース、あらゆる音が引力によって歪められたような音像はUnrealと呼ぶに相応しく、あまりにもカッコいい。
 そしてもはや小節を逸脱するピーナッツくんと市松寿ゞ謡さんのフロウがまさに異世界へと飛んでいくような壮絶な浮遊感を醸す。
「ペパーミントラブ」で浄化された空気でそのままどこへともなく飛んでいくような、アルバムの、そしてピーナッツくんの「次」を感じさせる楽曲です。

子供たちが眠りにつく頃
ピーナッツくんは無限の彼方へ行ってしまった
彼らは一体何を考えているのだろうか
綴る想いは泡沫の如く
されどこだまするのだあの鐘のように

まとめ

「恋愛」というモチーフを用いてVTuberシーンの今を描いた、素晴らしい作品だと思います。是非聴いてみてください。

 あとライブも大変エモかったです。

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 ぶっちゃけこの記事で書いてる話は全部ここに載ってるので、あわせて読んだ方がよいかと思います。
kai-you.net

ざっくり自分の音楽遍歴について書いてみる

 この記事はいい音楽 Advent Calendar 2020 16日目の記事です。

 _さんの5日目の記事を受けまして、自分の音楽遍歴についてつらつらと書いてみようかと思います。
 あくまでざっくりなので正確ではありません。

スキマスイッチ

 すっげー遠い昔に山下達郎とかオザケンとか聴かされてた記憶はありますけど、BGMとかテーマソングとかでなく、本当の本当に音楽を音楽だと認識して聴き始めた一番最初って、自分の場合は小学生の頃に映画ドラえもんで聴いたスキマスイッチだったりしますね。最初に聴いた音楽アルバムが多分「空創クリップ」で、そこから初期三作をちゃんと聴いてガッツリハマってたような覚えがあります。

 当時は「螺旋」「種を蒔く人」「スフィアの羽根」あたりが好きだった気がします。そしてつい最近「アカツキの詩」って良い曲だなあと思いました。

バンプアジカン

 スキマスイッチから1年ほど間は空くんですけど、多分に漏れず邦楽ロックの原体験はバンプアジカンでした。

 バンプの方が多分早かった気がする。初めて聴いたのはFF11Flash動画です。FF11Flashとか存在すら今思い出したわ……。

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 全然見覚えがない。

 orbital period以前のバンプはもう今に至るまでずーーっと好きですね。一番好きな曲は「Stage of the ground」です。

 アジカンはニコ動の作業用BGMで聴いたのが初めてですかね。

www.nicovideo.jp

 という動画がありまして、明確にロックバンドというものと初めて出会ったのがこの動画でした。

 この2バンドを聴き始めた頃は2008年頃で、既にYouTubeやニコ動、MySpaceなんかがあったのでPVなどを見まくっていた覚えがあります。

 あくまで余談になりますが、ニコニコ動画と「フルみっく伝染歌プレーヤー」というブログパーツのおかげでボカロ曲をめちゃめちゃ聴きまくってたり、ニコ動にアップされてる東方アレンジを聴きまくったりしてたのも同時期です。

 当時のニコ動では東方手書き動画に邦楽曲が使われていることが多くて、そこで新しいバンドを知るということも多々ありました。モグフヨさんとリーチャさんが代表格でしょうか。モグフヨさんの東方手書き動画が無ければ下手したら志村さん存命の内にフジファブリックを聴けてなかったかもしれないと思うと末恐ろしい。

97の世代と暗いロック

 アジカンなどの動画を漁ってると当然サジェストに当時のロキノン系バンドや遡って97の世代なんかが出てくるようになりますね。

 多分Syrup16gが解散したドンピシャの頃だったかな……当時「鬱ロック」って括りあったじゃないですか(僕の記憶が確かならば)。今思うとめちゃめちゃ安直なネーミングだ。平和な時代だったんですね。

 そういったワードから、そのSyrup16gpegmapTHE BACK HORNTHE NOVEMBERSGRAPEVINEBURGER NUDSPeople In The Boxなどの(当時)不健康な(イメージを抱いていた)バンドをどんどん掘っていった覚えがあります。

 あとはくるりナンバガスーパーカーを聴き始めたのもこの頃です。

 くるりとの出会いはネットはあんまり関係なくて「愉快なピーナッツ」のiPodのCM見て好きになったのがきっかけでした。

 ナンバガアジカン経由でしたが、「透明少女」を初めて聴いた時はなんやこれ全然良さがわからん……と思ったものでした。「鉄風 鋭くなって」と「NUM-AMI-DABUTZ」は一発で好きになったのでそういう適性だったんだと思います。

 初めて自分のお小遣いで買ったCDがくるり「魂のゆくえ」でした。「リルレロの後奏やたら長いな……」という感想を抱いたのを覚えています。

 そっからずっとくるりもシロップもバインもピープルも追い続けてますし、生で見れたナンバガはめっちゃかっこよかったので変化してないというか、なんともはやという感じです。

2009年~10年

 2009年、10年頃はレビューサイト見まくってそこから音楽を知るというのをやりまくってました。

 その頃あった蝿足昆布さんの「音猫シティ」というレビューサイトが邦楽も洋楽も大変バラエティ豊かで、ロキノン系に留まらない邦楽を掘っていくきっかけとなったのがそのサイトでした。全然関係ないけど小林銅蟲先生を知ったのもそのサイトでです。

 あとはアルバム全曲レビュースレとか放蕩息子の迷走とかWestern Voyagerとかです。アルバム全曲レビュースレのごった煮感(そして邦楽偏重感)もだいぶ音楽を聴く指針として影響を受けている気がします。

 当時、相対性理論とかモーモールルギャバンとかサカナクションとか最近アツいバンドとされていたものを追いつつ、いわゆるkokoronoやFantasmaや空中キャンプのような「邦楽の名盤」みたいなのは一通り聴いて、はっぴいえんどYMO界隈から80年代ニューウェーブ勢とか、フリッパーズ・ギターから渋谷系~ポスト渋谷系とか、残響系周りからポストロックやシューゲイザーに枝葉を広げたり、大阪ゼロ年代周辺からボアダムズ経由でノイズミュージックとか、中村一義から90年代宅録周りを掘ったりしてて、この辺り以降はいろいろ趣味が並行し始める感じがして、音楽遍歴を要約するのは難しくなってきますね。

 ただ、考えてみると2010年のこの時点で知らない音楽を掘り下げていくという音楽好きとしての自分は終わっていて、あとはひたすら「日本の音楽」という狭い輪の中をずっとぐるぐる回り続けているような気がしなくもないです。とここまで書いて気づきました。

2011年以降

 あとはもう広がらないのでlast.fmとかを見てください

https://www.last.fm/ja/user/yukigurasi/library/artists?date_preset=ALL

ここ1年でよく聴いた曲をSpotifyプレイリストにしました2019

 今年ってまだ1ヶ月半あるんですけど、作ってしまったものは作ってしまったので。
 一応解説っていうか感想みたいなのを書きました。

1.Quincy / GREAT3

 GREAT3がジョン・マッケンタイアと邂逅して産まれた極上のサイケポップ。ストリングスもコーラスワークも不可思議なコード進行も全てが60年代サイケマナーに則っためくるめく奇妙で美しい音世界。
 いきなりこんな曲で始まるというのもいいんじゃないかなあと思ってトップに置きました。東方アレンジ除けば今年一番聴いた曲ですし。

2.海より深い空の下 / ときのそら

 ときのそらさんの曲ですがこれはアゴアニキさんが作った曲で、もっぱらアゴアニキさんのセルフカバー版を聴いているのでこの元バージョンは正直あまり馴染みがないんですが、こっちしかない(し、こっちを選ぶべきな)ので。
 この曲はドストレートに良い曲ですね。今となってはもはや10年代初頭までの遺物かのようにも思える、飾り気のない真っ直ぐでポップな曲。でもこういう曲も僕が思ってるよりはまだまだ残ってたりして……残ってるよね?
「長い長い雨が止んだ時に目をはらしていた頃の私をあなた達が見つけてくれたんだよね 海より深い空の下」のフレーズが泣けるし、愛に溢れていて最高。
 ある種謎い曲の後にはこういうストレートな曲を置くものだと考えてる節があります。2曲目ですし。

3.RTRT / Mili

 聴かず嫌いしてたけど聴いたら滅法良かったシリーズ。
 この曲はもうイントロから空気が変わる。シリアスで緊張感ある音使いやメロディラインがもうツボ。巻き舌な英語とか中華な雰囲気も好きですね。最近中華文化に興味を持ってる(持ってるだけ)ので。
 あと歌詞が良い。まあこういう歌詞が刺さるのがオタクって感じですけど……。MVの絵、キョンシーマッドサイエンティストもどっちも可愛いし。
 この曲はやっぱ3曲目に置くべきなので3曲目です。

4.ベッテン・フォールズ / cero

 初めて聴いた時はピンと来なかったけどだんだんハマってきたシリーズ。
 POLY LIFE MULTI SOULってアルバムはやっぱ素人の僕でも分かるくらいリズムが気持ち良くて、そのリズム感にハマると一気に良くなってきますね。この曲とか変拍子の嵐ですけど、5拍子で刻むAメロから3拍子に変わって浮遊感ある4拍子の付点リズムにシームレスに流れ込む展開とかなんつーか海に放り込まれた感じがあってとても気持ち良くてよき。
 この曲からフェーズ2って感じで4曲目に置きました。プレイリスト作る時はだいたい3曲1フェーズセットで考えるようにしてます。

5.ダンスフロアのならず者 / 台風クラブ

 この曲も前曲に引き続きリズムが心地よい曲。台風クラブの曲はほのぼのでユースな感じがあってすごく好きです。どことなく感じる儚さが胸を打つタイプの。この曲じゃないけど「飛・び・た・い」とかまさに。
 この曲とかメロディがすごい切ないですよね。ピースフルな雰囲気の中ですごい切なさがあって好き。

6.ヴィーナス / ORIGINAL LOVE

 この曲結晶verって付いてるけどボーカル違くない? 詳しくないからアレだけど……。
 90年代初頭特有の音の感じというか、音薄くてリバーブ掛かってる感じが幻想的で儚い雰囲気を加速。とても美しい曲だと思います。
 この3曲はシティポップ枠。リズムも3曲続けてまったりしてる感じで、いい流れじゃないですか? まあ次もそうですけど。

7.Dr. Too Much / NONA REEVES

 POP STATION以降のノーナには珍しい(多分)全英詞の曲。お洒落でポップ。前3曲と異なるのは音がハイファイなところ。
 この曲はサビメロが本当に良すぎる。一発で耳に残るメロディ。それに載ってる英詞のリズムの感じもメチャクチャにハマっていて、聴いててすごい気持ちいい。

8.損と嘘 / 倉橋ヨエコ

 カラオケで歌うとすごい気持ちいいシリーズ。
「色々」は「今日も雨」目当てで聴いたんですけど次第にこっちにハマってしまった。歌謡的だけどお洒落でキャッチーなメロディが好き。そしてトんでるボーカルと歌詞。特に終盤の「そんとうそそんとうそそーんとうそ」のところは強烈。
 ここら辺はなんだろうな、飛び道具セクションですね。

9.ロウラヴ / King Gnu

 僕みたいな古い人間にとって多分King Gnuで一番分かりやすい曲。真っ当なロック。メロディラインはダウナーで奇妙で捻りに捻ってますけど。しかしメインのメロディは一発で耳に残る。
 しかしまあ、よくもこんなよくわからん音楽が人気になってんなあと思うんですよね。まあカルキ期の椎名林檎みたいな売れ方してると思えば不思議でもないですが。

10.Alabama / Neil Young

 興味持って借りてきたはいいものの60年代ということでずっと放置してたシリーズ。そんで聴いたらすげえかっこよかった。
 とにかく音が良い。特にギターとピアノ。ギターの空気感含みつつ濁ってる感じとか、ピアノの質感がすごい好きですね。メインリフがとてもかっこいい。
 サビで盛り上がったかと思えばうーうーアーラバーマで落ち着くっていう抑揚の付け方もすごい好き。
 この曲はぶっちゃけ置き場に困りましたけどまあKing Gnuカーネーションの間が一番合ってるかなって。

11.十字路 / カーネーション

 この曲もイントロから一発で持ってかれる曲。当時既に40超えのおっさん達が鳴らしているとはとても思えない格好良さとドキャッチーなメロディに溢れためちゃめちゃに良い曲。
 サビメロの二転三転ねじくれつつ聴き手を掴んで離さないメロディ運びがもう流石としか言いようがない。サビメロに至る繋ぎのメロディといい、フックしかない曲。
 飛び道具枠から次第にストレートなロックに移行しつつ終盤っぽくしていくという流れです。

12.さよならはエモーション / サカナクション

 834.194に納められた曲の中でもかなりゼロ年代ロキノン的な古き良きエモーショナル感に満ちた曲。シンシロとかkikUUikiに入っててもおかしくない、と思いましたが逆にこんなストレートな曲は入らなそうですね。
 この曲はもうほんと盛り上げ方が流石って感じですね。静かに静かに聴き手を高揚させていき、そしてラストの全員でのユニゾンに帰結する。サカナクションがユニゾンするのってほんとここぞって時だからエモみが深い。

13.アレグロ / in NO hurry to shout;

 ディーパーズNARASAKIさん作曲。このin NO hurry to shout;って漫画発のバンドですけどNARASAKIさんがストレートに格好良いロキノン的楽曲を量産していて、もっと早く聴けばよかったと思うことしきり。
 この曲はそんな中でも断トツにエモーショナルな曲ですね。ほんとドストレートなロックって感じで捻りは何もないんですけど、ひたむきなボーカルと演奏がメロディの良さを加速させていて胸を打つ。ラストでメロディがリフとユニゾンするのも格好良いです。

14.ひとつだけ / 矢野顕子

 もはやイントロからラストに至るまで一音一音が完璧。レジェンド。この曲のサビメロ聴くと郷愁が込み上げてきて無性に切なくなります。本当に優しくて美しい曲。
 アルバムではトップになってますが、こういうのをラス1に置きたいタイプなので。アウトロがぼん ぼん ぼんと繋がってるのでラストには置けない。

15.Candy Spaceship / Snail's House

 エイリアン☆ポップIIは今年初頭アホみたいに聴いてました。
 謎言語の歌と共に奏でられる、異様にかわいくて美しくて物悲しいメロディ。
 Snail's Houseの曲ってやっぱPixel Galaxyが印象強くて、あれに感じる刹那的な感じ、喪失感とか感傷みたいなものがどの曲にもあるような気がして、ことこういうセンチメンタルなメロディだとそれを色濃く感じてしまいますね。ラストを飾るにはこの曲以外ないと思いました。